債権回収(保全・執行を含む各種裁判手続き)

債権回収(貸金、売掛金等の回収)とは

「債権回収」などという言葉を耳にすると、もっぱら金融機関等が関わる領域であり、縁遠い話という話というイメージをお持ちになられるかもしれません。

しかし、会社を経営されたり、事業を運営していく中で、既にこの問題で御苦労された経験のある方にとっては、言われるまでもなく既に骨身にしてみている話かとも思いますが、「債権回収」とは、日々の事業運営を進めていく中で(これを「債権回収」という言葉で認識するか否かに関わらず)、最も基本的かつ重要な問題であることは疑いようも無い事実です。

すなわち、殆どの企業や個人事業主の方は、何らかの物品やサービスを提供して売上を上げていますが、必ずしも代価を現金で即座に受領できるわけではなく、むしろ、商品等の提供後、「月末締○ヶ月後の支払」といった形で、支払自体は先送りとなっているケースの方が多いのではないでしょうか。

そして、資金力に余裕のある大規模会社などは別として、多くの中小企業や個人事業主の方は、取引先からの代金支払いが日々確実になされる事を大前提とした事業計画を立てている、言い方を変えれば、多かれ少なかれ回収される売掛金等を順次運転資金として充てていく事で事業運営が為されているのが通常であると思われます。

このため、ひとたび売掛金等の回収が滞るようになると、それは、いずれ運転資金の不足を生じさせる事に繋がり、ひいては、自分自身の側の支払や従業員の給料の支払にも支障が生じたり、最悪のケースでは、例え会計上は黒字であったとしても「倒産」という事態に陥りかねないなど、場合によっては、まさに経営に直結してくる問題ということができます。

また、当然ことながら、債権回収の問題が意識される局面とは、債務者の資金不足によって既に支払の遅延が始まっているか、あるいは潜在的な倒産の危険性が高まっている状況ということになります。下手をすれば、いつ倒産してもおかしくない状況かもしれません。

そのような状況の中で行われる「債権回収」とは、あえて誤解を恐れずにいえば、基本的に早く回収できた者が事実上優先する「早い者勝ち」の世界ということもできます。

したがって、債権回収を行うに当たっては、何よりもスピードが大切になります(逆に、債権回収の前に、相手方の返済能力が無くなれば、債権の回収は事実上ほぼ不可能となります)。

そのため、現在もしくは今後の債権回収についてお考えということであれば、できるだけ早い段階で(より理想を言えば、現実に債権回収の問題が深刻化する前に)ご相談をして頂けますと、それだけ対処法の選択肢も広がりますし、結果として回収可能性も高くなると思われますので、まずは現状を客観的に分析してみるというだけの意味でも、お気軽にご相談頂ければと思います。

当事務所が提供するサービス

現実に債権回収を図る方法は、以下のように多岐にわたりますが、当事務所では、事前に詳しい状況を聞かせていただいたうえで、現状に応じた、最も適した回収方法をご提案致します。

1. 交渉による回収

例え、現時点では支払が遅延ないし止まっている相手であっても、弁護士を介した請求や交渉を行うことにより、実際には訴訟等の手段を取るまでもなく、速やかに債権を回収することができる場合があります。

特に、内容証明郵便を用いた請求は、時効の中断という点を除いて、それ自体何か法的な効果があるわけではありませんが、弁護士が代理人として作成し、名前も入れた請求文書は、事実上、相手方に対し、その後の法的措置(詳しくは後でご説明します)を予想させるものですので、そのような事態を回避したい相手方に関しては、この時点で支払に応じてくる可能性が高くなります。

また、相手方の状況によっては、支払の時期や方法について多少の条件変更をすることにより、任意の支払を受けやすくするという方法も考えられます。特に、自分の側として、実際には法的手段等に時間を掛けたく無い場合であっても、あえて弁護士を通じた法的手段の可能性に言及することによって、結果的に訴訟に拠らず、交渉での解決が可能となるケースも少なからず存する思われます。

2. 強制執行

強制執行とは、債権者が、いわゆる国家権力を借りて、相手方の同意や協力がなくとも、自らの権利の内容を強制的に実現するための手続きです。

すなわち、債務者が、不動産や自動車などの実物資産、売掛金や預貯金などの債権、あるいは給与等の収入があるにも拘わらず、支払いを拒んでいる場合には、その資産を強制的に換価するなどして、そこから支払を受ける(債権を回収する)ことができるというものです。

強制執行が真に有効なものとなるためには、幾つかの条件がありますが、当事務所では、依頼者のご希望や、相手方の状況等に応じて、最適な手段を取れるようサポート致します。

(1)前提として債務名義の取得

強制執行を行うためには、「債務名義」という、ある種の特別な文書が必要とされています。
そのため、法律上何らかの債権を持っていたとしても、それだけでは直ちに強制執行をすることはできず、まずは、何れかの方法により「債務名義」を取得するところからスタートすることになります。

債務名義を取得する方法には、大きく分けて以下の4つがあります。

①公正証書

公正証書とは、公証人(退職した裁判官や検事などが多いです)が作成する文書です。作成には債権額などに応じて若干の手数料はかかりますが、債権者と債務者が同意すれば直ちに作成でき、「執行認諾文言」を入れることにより、以後、裁判等の手続することなく、不払いが生じた場合には直ちに強制執行が可能になるという点で、非常にメリットがあります。

公正証書はいつでも作成が可能ですので、本来は、契約時など支払が滞る前に作成しておくのが理想ではありますが、実際には取引開始時にいきなり公正証書を作成を要請するのも困難な場合も多いと思われますし、前項で説明致しました「交渉による回収」の成果の一部として作成されることも少なくありません。

②支払督促

支払督促は、相手方住所地の簡易裁判所に申立を行うことになりますが、通常の訴訟とは異なり、書面審査のみで行われ、申立人が裁判所に出頭しなくて済むほか、相手方を呼び出して事情を聞いたり、証拠調べなども一切行われないため、相手方の協力が無くとも、比較的迅速(1ヶ月前後)に債務名義を取得して強制執行手続ができるようになる点にメリットがあります。

もっとも、手続中に相手方からの積極的な異議が出されると、通常の訴訟に移行することになりますので、金額や事実関係に争いがないなど、実際にこの手続による処理が可能なのは、相手方が法廷にい出てまで争わないであろうと予想されるケースに限られてくることになります。

③調停

調停とは、一言で言えば、裁判所という場所において、第三者を入れた形で行われる「話合い」であり、その結果、双方が合意に至った場合、その合意内容(「調停調書」にかかれた内容)は、判決と同じ効力を持つ債務名義となるなるというものです。

あくまで話合いであることから、相手方にその気持ちがない場合に調停を成立させることは困難ですが、申立手数料が裁判より安く設定されているほか,主張や立証を厳密な形で行うことが要求されないため、訴訟と比較して、比較的簡易かつ円満な解決を目指すことが図ることができるという点にメリットがあります。

④訴訟(簡易裁判所、地方裁判所)

これまでに述べた手続では解決が難しい場合、最終的には相手方に対し訴訟を提起し、判決を取得することにより強制執行を目指すことになります。

実際に請求する額により、提訴先が簡易裁判所と地方裁判所とに分かれますが、お互いの主張と立証に基づき、裁判所が判断を下すという基本的な構造に違いはありません。
訴訟となった場合、どのような主張立証が必要か、又、どの程度の期間を要するかなどに関しては、相手方の対応や証拠等の充実具合により異なりますので、詳しくは、相談担当弁護士に御相談下さい。

(2)強制執行先の選定

強制執行の流れは、強制執行の対象によって若干異なりますが、大まかに言えば、債権者申立→(本)差押え→強制換価(現金化)→配当、という手続きになります。

そして、実際に強制執行が有効となるのは、いうまでもなく、差押の対象としたた財産が実際に存在し、かつ強制換価可能である(十分な財産的価値をもっている)場合ということになります。そのため、強制執行を検討する際に、もっとも大切となるのは、強制執行先の選定、あるいは、その前提として強制執行可能な財産の探索であるということが言えます(具体的内容に関しては事案により異なりますので、相談担当弁護士に御相談ください)。

①不動産執行

土地・建物などの不動産を対象とし、対象物件を競売により強制的に売却して、その売却代金から配当を受けるという方法です(これ以外にも、管理人に不動産を管理させ、そこから上がる賃料などの収益を配当する「強制管理」という方法もありますが、殆どのケースが強制競売となっています)。

不動産執行は、不動産に担保が付いていない場合などには、一般に不動産が高価値であることから回収可能性も高くなるというメリットがあります。しかし、その一方で、不動産が売却され、実際に配当を受けられるまでに比較的長期間要するのがデメリットとなっています。

また、事前に抵当権などの担保設定できていた幸運なケースを除くと、倒産の可能性が出てきているような局面において、いまだに無担保の物件が残っていること自体が少ないかもしれません。
但し、登記簿上、抵当権等が設定されていても、それだけで競売が不可能ということはなく、債務額と不動産価格の状況によっては、十分な回収可能性が期待できる場合もございますので、まずは相談担当弁護士にご相談下さい。

②動産執行

商品や機械、家財道具・現金などの動産を対象とし、これらを強制的に売却することにより、売却代金から配当を受けるという方法です。

不動産執行と比較して、早く簡便に実施できますし、債務会社が営業を継続している場合などには、相当な回収可能性が期待できる場合もありますし、事実上、相当なインパクトを与えるという心理的効果も少なからずあると思われます。

その反面、一つ一つの換価金額が低い事が多く、差押えの対象(場所)を誤ると、結果的に殆ど回収につながらないこともありえますので、事前にしっかりと検討をしたうえで、強制執行に着手する必要があるといえます。

③債権執行

銀行等の預金のほか、給料、売掛金、貸金など、債務者が第三者に対して有している権利(債権)を対象とします。これも、不動産執行と比較して、早く簡便であり、かつ換価性も高い(預金等は、債権がそこに存在している限り、同額がそのまま回収に繋がる可能性が高い)ので、簡易迅速な回収という意味では、最も有効な手段とも言えます。

しかし、その一方で、債権それ自体は目に見えない存在であるため、事前に何らかの情報(ヒント)を得ていない限り、これを新たに発見することが困難な場合もあります。実際に財産を発見できる可能性や方法等につきましては、個別の状況により異なりますので、相談担当弁護士に随時ご相談下さい。

3. 民事保全(仮差押、仮処分)

前項の説明は、実際に債務名義を取得できた後、強制執行に着手する段階においてもなお、相手方の資産を有る程度把握できていることが前提となっています。

しかし、現実問題として、訴訟等により債務名義を取得するまでには、多少なりとも時間を要しますし、当然の事ながら、訴訟等を行うということは、将来的に強制執行まで行われる可能性があること債務者に知らしめることにも繋がります。そのため、その間に、差押えの対象として考えていた財産を他者に売却されたり、財産の所在を隠されてしまう(例えば把握していた預金口座が変更されてしまう)などの危険性は否定しようがありません。

そのため、財産の散逸や隠匿が行われそうな場合には、実際に相手方に対するアクションを起こす前に、裁判所の命令により財産を保全する(売却等を禁ずる)という事も可能が認められていますし、回収可能性を維持するためには、必要不可欠といえる場面も少なからずあります。

もっとも、保全命令を得るためには、裁判所が定める一定額の保証金を供託する必要があります(原則として裁判等の終了後には全額戻ってきますが、それまでは別の目的のために使用することができなくなります)ので、保全の必要性のほか、軍資金の多寡との兼ね合いで、保全の要否を決めることになります。

保全の手続きや、予想される保証金の額等につきましては、個別の判断が必要となりますので、相談担当弁護士に御相談下さい。

4. 予防的な対応(顧問契約による継続的な対応)

これまでに説明してきた事項は、現実に支払が滞ってしまってからの話が主となっていますが、より視点を広げると、取引先に対する信用調査や、相互に取り交わしている契約書の整備、さらには事前の担保設定等により、回収不能となる可能性を少しでも減らすための予防措置を採ること自体も、広い意味では立派な「債権回収」ということもできます。

そのため、当事務所では、単発の債権回収事件としてもご依頼もお受けする一方で、既に多数の債権回収案件が累積してしまっているような場合や、断続的に債権回収が問題となる場面があり、将来的な面も含めて継続的な対策を取りたいというご要望に対しては、別途「法律顧問サービス」の提供も行っております。

詳しい内容は「法律顧問サービス」の各ページにも記載させていただいておりますが、ご要望の内容によっては、法律顧問サービスの方が、単発でのご依頼よりもメリットがあり、かつコストも抑えられるという場面も少なくないと思いますので、そちらも併せてご検討頂ければ幸いです。

※例えば、当事務所の月額顧問料は、33,000円(税込)からと、内容証明による請求を単発で受任する場合と同額ないし少ない額となっています。それだけのコストにより、ある特定の相手方に対する債権回収問題だけではなく、範囲や内容に限定の無い様々の件につき重ねて法的アドバイスを受けられる事になりますし、そもそもスタンダードプランにおいては、内容証明郵便による請求自体も実費を除いた別途費用を要せず、毎月の顧問料の範囲内での処理が可能となっていますので、債権回収の問題が頻繁に生じているという場合には、単発でのご依頼と比較して、明らかに法律顧問サービスの方がメリットも大きいと思われます。