企業再建/事業再生(民事再生・破産手続)

企業再建/事業再生(民事再生・破産手続)とは

皆様が会社を経営されている場合で、借入金等が増大し、債務の返済が困難となった場合、採りうる手段としては、大きく分けて、再建型の手続と清算型の手続とがあります。

このうち、再建型の手続には、①任意整理(私的整理ともいいます)と②民事再生とがあり(この他に会社更生と呼ばれる手続もありますが、この手続は、主に、大企業を想定した複雑かつ厳格な手続であり、中小企業による利用は現実的ではないため、ここでは説明を割愛します)、清算型の手続には、③破産と④特別清算という手続とがあります(このうち、特別清算手続については、中小企業の場合、清算型手続の代表である破産手続ではなく、あえて、この手続を選択する実益は乏しいため、説明を割愛します)。

以下、それぞれの手続の概要等について、簡潔にご説明いたします。

専門サイト

事業再生専門サイト
事業再生専門サイト

1. 任意整理(私的整理)について

これについては、個人の場合の項目でご説明したとおり、民事再生手続や破産手続のような裁判所を通じた法的整理ではなく、裁判所の関与なしに、債権者と個別に交渉して月々の返済額や返済期間等について合意するというものです。

この方法は、同じ再建型手続でも、後述する民事再生手続と異なり、裁判所を通じた法的手続ではないため、会社の評判を大きく損なうというデメリットを避けることができますが、他方で、返済額や返済期間について、あくまで債権者との個別の合意が必要であるため、債権者数が多数にのぼるような場合には、あまり現実的な手続ではないといえます。

したがいまして、この方法による会社の再建は、債権者数が少なく、返済額や返済期間について、債権者と個別に合意することが期待できる場合に限られるでしょう。

2. 民事再生について

民事再生は、事業の再建を目的とする手続ですが、同じく再建型の手続である会社更生手続とは異なり、株式会社に限らず、会社法制定前の旧商法下の有限会社や医療法人、学校法人等でも利用することができます。また、この手続は、裁判所の監督のもと、債務者が主導的に進める手続で、会社更生手続のように経営者が退任することなく、そのまま経営者としてとどまれる場合も多く、比較的、柔軟な手続といえます。

民事再生を申し立てた場合、申立てから約6ヵ月後までに、大幅な債務の免除を内容とする再生計画案を策定し、債権者の頭数かつ債権額の過半数の賛成により、再生計画案の認可決定を得たうえで、再生計画に従って債権者に弁済することになります。

もっとも、さいたま地方裁判所管内においては、法人の民事再生事件の申立件数は、多くとも年間10件以下で推移していて、それほど利用されていないのが現状であり、法人の再生事件の多くは、少なくとも関東近県においては、そのほとんどが、東京地方裁判所に申立てがなされているという状況にあります。

したがいまして、さいたま地方裁判所管内において、実際に民事再生の申立てに至るケースは少ないかもしれませんが、事業の再建をご検討の場合には、まずは、ご相談いただければと存じます。

3. 破産について

破産手続は、皆様もご存じのとおり、会社の債務が増大してその返済が困難となり、会社を清算する場合の最も代表的な法的手続です。

法人が破産の申立てをすると、裁判所において破産管財人が選任され、換価可能な資産がある場合には、破産管財人によって換価処分がなされ、債権者に配当がなされます。

当事務所では、多くの法人破産申立て案件の実績がございますが、法人の破産申立てを行う場合、申立てに必要な書類等の準備にある程度の労力と時間を要することから、相応の弁護士費用を申し受けることとなり、また、裁判所へ予納する費用についても、最低でも22万円ほどかかりますので、もし、懸命のご努力にもかかわらず、皆様の経営する会社の資金繰りが悪化し、清算を検討せざるを得ない状況に陥った場合には、できる限りお早めにご相談いただくことをお勧めいたします。

これまでの経験上、資金的にある程度の余裕があるうちに、勇気あるご決断をなされることが、結局は、従業員や債権者のためにもより良い結果となるからです。

4. その他(事業再建手段としての破産手続の利用について)

前述のとおり、破産と言えば、事業の清算の手続であると述べてきましたので、矛盾しているように思われるかもしれませんが、破産手続は、事業再建の手段としても利用することができます。

すなわち、破産手続の申立てと事業譲渡を組み合わせることにより、皆様の会社の事業を存続させることが可能となる場合があります。破産手続においては、民事再生手続の場合と異なり、裁判所の許可があれば事業譲渡を実行することができますので(民事再生手続においては債権者の意見聴取手続が必要となります)、より迅速に事業譲渡を行うことができます。

事業譲渡を行うことができれば、従業員の雇用が確保され、また、会社の財産を個別に切り売りするよりも大きな対価を得ることができ、結果的に、債権者にとってもメリットが大きいことになります。

もちろん、事業譲渡を行うには、事業の譲受先を探すことが必要となりますが、譲受先を見つけるには相応の時間がかかりますので、事業の存続・再建をお考えの場合には、できる限りお早めにご相談いただければと存じます。